初日の舞台あいさつで、「見てくださる方に(生き方を)押しつける気は、サラッサラないです! 幸せは人それぞれという意味です」と笑顔で語った松。
今年生誕100年の作家、太宰治の短編小説「ヴィヨンの妻」をベースに、他の太宰作品やエピソードを交えたストーリー。
太宰といえば独特の暗さが持ち味だが、映画には太宰的暗さとは別の明るさがあるという。ヒロイン・佐知を演じる松の個性によるところが大きいようだ。佐知は、借金を抱え破滅的な性向の放蕩小説家の夫(浅野忠信)を支える。夫の犠牲になるのではなく、どん底の暮らしの中でも自分の魅力を発見していく、しなやかな女を演じている。
「松でもっている映画だね」と話すのは映画評論家の垣井道弘氏。
「松の女優としての魅力は品のよさ。この作品ではそれが最大限に生かされている。他の女優では演じ切れなかっただろう」
喜怒哀楽の表情の豊かさに加えて、とりわけ垣井氏が松の演技に感心したのは映画の終わり近く、佐知が旧知の弁護士に、夫の保釈金立て替えを頼もうとするシーンだという。
「ここで佐知は真っ赤な口紅を塗って会いに出かけるのだが、口紅を塗るときの松の毅然とした表情がすばらしい。いやらしくなく、それでいて女の武器を最大限に生かそうというところで、松の上品さと女の強さが見事にマッチしている」
夫の愛人役には広末涼子(29)。
「広末の演技も見ごたえがある。とにかく男として、松と広末にモテモテなんて、うらやましくて、悔しくなる」と話す映画ライターも。
本編は今年9月のモントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞した。出演者はほかに、伊武雅刀、室井滋、堤真一、妻夫木聡ら実力派がそろっている。この秋、大人が見てソンしない映画といえそうだ。


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